23Jan
会社員として勤めていて、今の生活に満足できていますか? 将来への不安やお金の心配などないでしょうか?
本業の仕事は今のままで、別の仕事を副業として考えている方もいるのではないでしょうか。けれども、勤めている会社の就業規定がどうなっているのかわからなくて、副業を始めて良いか動き出せない人がいるのも現状です。禁止されていたり、制限を設けている会社もあります。そこで、副業と就業規則について確認してみましょう。
目次
1. 複数の仕事をもつ働き方
まず、本業以外の複数の仕事を持つ雇用形態にはどのようなものがあるのかを確認してみます。それぞれの形態の法的な位置づけを知っておくことが重要です。
(1)副業
ここ数年で、政府が働き方改革の一環で副業を推進していることから、副業という言葉を耳にする機会が増え、副業・兼業を解禁する企業も増えてきています。
副業という概念は広く色々な解釈がなされており、副業についての明確な定義はありません。一般的には本業を持っている人が、それとは別の手段で収入を得るための仕事やビジネスを持っていることに対して副業と呼んでいます。
【副業の内容】
・自宅での内職
・株式
・FX投資
・ネットオークションでの販売
・クラウトソーシングでの記事やイラストなどの作成
・別の会社での勤務や起業すること
・賃貸経営・資格を活かした単発の仕事
・アンケートモニターやポイントサイト
(2)複業
副業と同じで明確な定義はありませんが、複業とは字が表すとおり複数の仕事を持つことです。すべての仕事が本業になるので、副業と比較して、収入、要する時間、労力を要します。
複業では本業に限りなく近いので、自分のスキルや特技を生かしプロ意識を高く持ち働かなくてはならないので、自己管理能力がより問われます。
パラレルキャリアとも呼ばれ、この言葉をみかけることも増えてきています。これからの社会における新しい働き方のひとつとなっており、お金を稼ぐことが目的ではなく、社外活動と本業が相乗効果を生み、人生を豊かにすることが本質の働き方です。
(3)兼業
こちらも明確な定義はありませんが、一般的には会社に勤務しながらも自ら事業を経営し、本格的に商売を営むこととされています。例えば、会社に勤務しながら農業経営を行う兼業農家がわかりやすい例です。
2.法律について
働き方改革では副業を解禁する方向に進んでいますが、解禁した会社でも事前の届出や許可を条件に副業を認めている会社もあります。今も就業規則で副業が禁止されている会社も多くあり、手続きを踏まずに副業が発覚した場合、会社での懲戒などの対象とされてしまう場合があります。
けれども実は、法律的な観点では副業は禁止されていません。
現行の憲法および、その付属法(民法や商法など)においても、特に会社員の副業を禁ずる旨の条文は定められていないのです。
個人が同時に複数の企業と雇用契約を結ぶことや会社員として働きながら個人事業主としてビジネスをすることに対する規定は、本来は存在しないという事です。
会社で容認している副業の範囲を超えた場合には重い処分がなされる可能性がありますが、その処分は妥当でない可能性があります。
3.副業などが禁止されてきた理由
これまでに多くの企業で禁止とされてきた副業が政府の働き改革で解禁が推進されていることをうけて、徐々に副業が解禁される方向で進んでいます。 働く側からすると、空いた時間を活用して自分のスキルや資格などを活用した本業以外の仕事に、副業という形態で就きたいというニーズはあったと思います。
けれども、会社の就業規則で副業を禁止にするには、企業側にも理由があります。
就業規則で問題視されている項目にどのようなものがあるのかを確認しておきましょう。
【副業で想定されるトラブル】
〇本業の業務に支障が生じる
会社としては社員が副業に力を入れすぎて、本業の業務に支障が出ることは問題視せざるを得ません。 副業と本業が同じ就業時間や同じくらいの思い入れで働いている、もしくは副業の方に思い入れで働いているのであれば、本業の業務に支障をきたしてしまい、疲れから身体を壊してしまうことにもなりかねません。
〇会社の情報漏えいにあたる
副業を始めるにあたって、業務の慣れている本業に関係のある仕事を副業に選ぶ場合があります。そうすることにより、社外秘とされている情報やノウハウが他社に流出してしまう可能性があります。 会社の秘密事項を部外者に話してしまうことは情報漏えいですから、本業の会社としては当然見逃せないものになってしまいます。
〇会社の信用を落とす
副業において犯罪行為を行ったり、反社会的な勢力と関わりを持った場合、それが理由で本業の会社がイメージダウンにつながってしまったり、信頼が失われてしまったりなど、会社に損失を出してしまうことになってしまうことも罰則の対象になります。
4.懲戒処分を受ける場合
副業を理由として、本業の会社側から副業をしていた社員へ懲戒を命じる場合、就業規則に根拠規定があることはもちろん、副業禁止規定に違反している明確な証拠があることや、懲戒処分の内容に妥当性があることも基準となります。
これらの事実をもとに当該社員へ注意勧告を行い、まずは会社と十分な話し合いを持つことが前提となります。採算の注意勧告に応じず副業を続けて仕事に支障をきたし続けた場合は、命令違反として懲戒を行い、さらに副業を止めなければ懲戒解雇にする旨が伝えられます。
結果として、突然会社を解雇されたり、給料が支払われなかったりするなど、本業の会社との労働関係に関するトラブルが生まれてしまい話し合いだけでは解決しない場合には、トラブルの内容に踏まえて裁判所や労働局、弁護士会など複数の機関によって解決に協力してくれる制度がありますので利用するとよいでしょう。
〇労働審判制度
労働側と会社側との間のトラブルを解決するための専門的な手続きで、地方裁判所で行われます。
労働審判の調停では、労働問題に詳しい労働審判員が間に入って当事者間の調整をしてくれます。
調停で合意ができれば、お互いが納得して解決できますし、状況に応じた柔軟な解決方法も可能です。
スピーディに問題を解決したい方や弁護士に依頼せずに自分で解決を目指したい方にも労働審判の制度を行うことで問題を優位に進められることになります。 多くは3ヶ月程度で最終解決しています。
【利用できるトラブルの例】
・解雇トラブル
・雇い止め
・退職強要
・退職勧奨
・未払い賃金(残業代、退職金、賞与)
・正当な理由のない降格や減給、配置転換など
【利用できないトラブルの例】
・パワハラ上司を訴える
・セクハラ加害者を訴える
・賃金の値上げ
・公務員の場合
このような場合は労働審判の解決ができません。公務員は一般の民間企業とは異なる制度によって雇用されているので労働審判を利用できません。
労働基準法や労働組合法、労働関係調整法のいわゆる労働三法の適用がなく、国家公務員法や地方公務員法によって、国や自治体との雇用関係が管理されています。
〇労働審判の申し込み方法
裁判所に申し立て書を提出すると、裁判所より1回目の審理期日がしていされます。
その日までに会社は裁判所へ答弁書を提出する決まりになっています。
審理では当事者間の調停をメインに行います。労働審判の調停により確定した結論は通常の裁判における和解と同様の効力を持つため、強制執行が可能になります。
【労働審判の申し立てに必要な資料】
・申立書
・雇入れ通知書
・給与明細
・解雇通知書などの証拠文書の写し(コピー)
・手数料(数千円~1万円程度)
弁護士に依頼して数十万の費用がかかるよりは、金額も安く、解決のスピードも速く解決につながります。
5.本業と副業を両立させましょう
会社の就業規則で副業が禁止されていたとしても、法律的な観点では副業は禁止されていません。
ですから、絶対に副業が出来ないわけではありません。
しかし、副業によって会社に不利益なことが起これば処分を受けてしまう可能性もあります。
もし副業が発覚したり、副業との兼ね合いで本業の会社とうまく行かなくなってしまった場合の対処の方法もお伝えしましたが、副業をする上で本業の就業時間中は副業をしない、本業の備品を持ち出して副業で使うことがないようにする、本業で得た情報をむやみに漏らさないなどに配慮して仕事をしていくことが大切です。
副業をしながら、本業をおろそかにせずにうまく両立していくにはどうしていけばよいか見極めていきましょう。
そのうえで、仕事をする目的もはっきりさせ、自分なりにどうすれば仕事だけでなく、プライベートも含めた生活全般をよりよいものにしていくのかを考えていくことをおすすめします。